メリー*メリー
「そうなりますね…って、笑っている場合じゃないよ。

寮の仲間や先生が心配しているに決まっている。早く帰るべきだよ」

僕は真剣にそう言うけれど、レイは困ったように微笑んだ。

「どうしてもここに来たかったんです。それに、寮の先生も、友達も、仲間も、みんな、私がここにいることを知っていますから」

心配いりません、とレイは言った。

「それに、帰りたくても今は帰れませんから」

レイは目を細めて少し悲しそうに笑っていた。

「どうして?」

「まだその時じゃないですから」

「その時?」

「いずれ、椎にも分かるときが来るのかもしれないですね」

レイは目を細めて少しだけ悲しそうに、寂しそうに、笑っていた。

「レイってよく分からないことを言うね」

レイは訳が分からない、という顔をした。

しかしレイよりも僕がその顔をしたい気分だ。

「レイは天使が嫌いなの? 雪の妖精の方が好きなの?」

「え?」

レイは僕の言葉の意味が分からないようで眉をひそめた。

「だってレイ、さっき、僕が天使みたいだったよと言ったら、雪の妖精ですって怒ったでしょう?」

そこまで説明すると、ああ、とレイは晴れやかな顔をした。名探偵が迷宮入りになりそうな事件のトリックを導き出したような顔だった。

「だって、私は雪の妖精ですから」

なんじゃそりゃ。

僕は溜息を吐いた。

「あのね、レイ。そういうことを言ってほしいわけじゃないんだ」

するとレイは首を横に振り、両手を振った。


「違うんです! 決して、変なことをいうやつだなんて誤解しないでくださいね!

私は本当に雪の妖精なんです!」


この発言のどこをどう見て、変なことを言うやつにしか見えない。

「そんな疑い深い目をしないでください!

私、嘘なんてついていませんから」

レイは少し怒ったように反論した。

「そう言われてもね」

雪の妖精だってことが嘘じゃないって言われても、到底信じられるもんじゃないよね。

僕は溜息を吐いた。


「分かりました、分かりましたから!」


レイは大声で僕に言った。


「今から、証拠見せますから!」

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