メリー*メリー
だから、と僕は溜息を吐きながら、レイに言った。
「僕は今、自分とレイの生活でいっぱいいっぱいなの。それに犬を買うのにもお金がかかるし、飼育するのにもお金がかかるの。僕にそんな余裕はないの」
「分かった?」と僕が問うと、レイはそっぽを向いて黙ってしまった。
まったく、聞き分けのない子どもみたいだ。
「レーイ?」
僕がレイの顔を覗き込むように見ると、レイはふくれっ面をしながら一言「椎のケチ」と小声で言った。
「ケチでも何でもいいよ」
僕は溜息を吐いた。
「何を言われても飼わないからね」
レイは完全に拗ねてしまったようだ。もう何も言わない。
はぁ、と僕はまたため息を吐いた。
「レイ、そこの喫茶店に寄ろうか」
レイは不思議そうに僕を見た。
「甘いものでも食べようよ」
甘いものは、心まで満たしてくれるから。
*
「お待たせいたしました。ホットココアとコーヒーです」
運ばれてきた2つのマグカップ。白い湯気が立ち上り、優しい香りが広がる。
レイは「ありがとうございます」とホットココアの入ったマグカップを受け取ると、ふうふうと息を吹きかけ冷ましてから一口飲んだ。
そして、ほう、と息を吐いて、うっとりとした表情を浮かべる。
「おいしい?」
そう尋ねれば、レイはこくんと頷いた。
「おしいです、すごく」
そしてマグカップのなかのココアをまじまじと見つめる。
「どうかしたの?」
するとレイは「あの…」と俯いてココアを見ながら言った。
「椎が作ってくれるココアと味が違います…」
「どうしてなんでしょう?」ととても不思議そうな顔をしている。
僕は笑って「それはそうだよ」と言った。
「お店のココアだもん。僕がつくるインスタントのものとは違うよ」
するとレイは「そうなんですか!?」とひどく驚いた様子で僕を見上げると、またココアを覗き込んだ。
…ほんと、いちいち可愛いな。
なんて、レイを見ているとそんなことを思ってしまう。
2人きりの喫茶店、流れる穏やかなピアノジャズ。ゆるり、穏やかな時が流れる。
僕はピアノジャズの音を聞きながら、ミルクを溶かした甘めのコーヒーを口に含んだ。
「僕は今、自分とレイの生活でいっぱいいっぱいなの。それに犬を買うのにもお金がかかるし、飼育するのにもお金がかかるの。僕にそんな余裕はないの」
「分かった?」と僕が問うと、レイはそっぽを向いて黙ってしまった。
まったく、聞き分けのない子どもみたいだ。
「レーイ?」
僕がレイの顔を覗き込むように見ると、レイはふくれっ面をしながら一言「椎のケチ」と小声で言った。
「ケチでも何でもいいよ」
僕は溜息を吐いた。
「何を言われても飼わないからね」
レイは完全に拗ねてしまったようだ。もう何も言わない。
はぁ、と僕はまたため息を吐いた。
「レイ、そこの喫茶店に寄ろうか」
レイは不思議そうに僕を見た。
「甘いものでも食べようよ」
甘いものは、心まで満たしてくれるから。
*
「お待たせいたしました。ホットココアとコーヒーです」
運ばれてきた2つのマグカップ。白い湯気が立ち上り、優しい香りが広がる。
レイは「ありがとうございます」とホットココアの入ったマグカップを受け取ると、ふうふうと息を吹きかけ冷ましてから一口飲んだ。
そして、ほう、と息を吐いて、うっとりとした表情を浮かべる。
「おいしい?」
そう尋ねれば、レイはこくんと頷いた。
「おしいです、すごく」
そしてマグカップのなかのココアをまじまじと見つめる。
「どうかしたの?」
するとレイは「あの…」と俯いてココアを見ながら言った。
「椎が作ってくれるココアと味が違います…」
「どうしてなんでしょう?」ととても不思議そうな顔をしている。
僕は笑って「それはそうだよ」と言った。
「お店のココアだもん。僕がつくるインスタントのものとは違うよ」
するとレイは「そうなんですか!?」とひどく驚いた様子で僕を見上げると、またココアを覗き込んだ。
…ほんと、いちいち可愛いな。
なんて、レイを見ているとそんなことを思ってしまう。
2人きりの喫茶店、流れる穏やかなピアノジャズ。ゆるり、穏やかな時が流れる。
僕はピアノジャズの音を聞きながら、ミルクを溶かした甘めのコーヒーを口に含んだ。