メリー*メリー
「レイ!」

最後にレイを見た場所に辿り着いたときには、もうそこにはレイの姿はなかった。

「クソッ!」

…レイはどこにいった。

左右を見渡しても他人ばかり。レイの姿なんてどこにもない。

あぁ、どうすれば。

交番へ行くべきか?

いや、でもそんなに離れてはいないはず。

一体、どこに行ったんだ。


「お、椎じゃん」
 
よく知っているその声が聞こえてハッと振り返る。

「椎くんがこんなところにいるなんて珍しいね」

「…ユズ、紗由」
 
そこにはユズと紗由がいた。

「2人で一緒にこんなところにいるなんて、どうしたの?デート?」

忙しない心を落ち着かせようとわざと少しからかって言えば、紗由は心外だと言わんばかりの形相で「そんなわけないじゃない!」と大声で反論した。

「クラス会の準備だ。俺と紗由が当番だから」

ユズがため息交じりにそう言った。


「クラス会…あぁ、25日の」

「そうそれ。お前も来るだろ?」

僕は答えを詰まらせた。

「…無理かも、しれない」

「何で?」

ユズは心底不思議そうに尋ねる。

「今…いとこが僕の部屋に住んでて、面倒を見なくちゃいけないから」

レイのことを”いとこ”だなんて。嘘をつくのは嫌だけど、それ以外にレイのことを、レイがどうして僕の部屋に住んでいるのかをうまくごまかす方法を知らない。


ユズは「それは仕方がないな」と小さく笑って、それ以上は詮索しなかった。

「それにしてもどうしたんだよ?そんな焦ったような顔をして」

心ここにあらずという感じじゃないか、とユズは言う。

「実は…いとこを見失ってしまったんだ」

事情を話せば2人とも真剣な顔になった。

「この人混みの中で、か。それはまずいな」

「早く見つけないと」

「あぁ、そうなんだ」

じゃあ、と2人と別れようとしたところで、ユズに呼び止められた。

「何? ユズ」

「俺達も手伝う」

予想外の発言に、僕は目を丸くした。
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