メリー*メリー
「心配したんだよ」
「…はい」
「探したんだよ」
「…はい」
僕に怒られるレイは俯いたまま頷いて、そしてもう一度「ごめんなさい」と謝った。
どうやら反省はしているらしい。
本当は、2度と知らない人間についていくなだとか、他人にもたくさんの迷惑と心配をかけるなだとか、まだまだ怒りたいことは山ほどあるけれど。
「もう1人でどっか行かないで」
これだけは、守ってほしい。
レイがいなくなってしまって、どれほど心配したことか。
「そうだぞー、椎のいとこ」
ユズが後ろから僕の右肩に手を置いた。
「椎が珍しく焦った表情をして探してた」
まるでいたずら好きな男の子のようにニカッと笑うユズの言葉を聞いて目を丸くするレイ。
「そうだよ」
今度は紗由が言った。
「レイちゃんが危険な目に合っていたらどうしようって、すごく心配してたんだよ」
「ほんと、こんなに焦った椎の顔なんて滅多に見たことねぇよ」
クククと笑うユズと穏やかな表情の紗由。
「みなさん、ごめんなさい」
レイはガバッと頭を下げた。
そしてニコッと笑ったんだ。
「これから気を付けます!」
にっこり微笑み合う3人。
けれど僕は笑わないで、まっすぐレイの名前を呼んだ。
「もう、いなくならないで」
少し掠れた小さい声だった。
ユズも紗由もハッとしたようにその表情を暗くした。
『…ごめんね…』
それはいつも、唐突に、鮮明に、脳裏に映る。
それはまるで記憶に呑み込まれるようで、だんだんと現実と過去が混ざって足元がふらふらしてくる。
脳裏を過る、いくつかの映像。
繰り返し思い返されてきた、僕の記憶。
苦しい、悲しい。
息が、詰まりそうだ。
誰か、助けて。
誰か…
「椎、大丈夫か」
ユズが駆け寄って、僕に声をかける。
その声で、脳は目覚めるようにクリアになった。
ユズやみんなの心配そうな顔が見える。
「うん、大丈夫」
僕は笑ってみせた。
やはりユズは何も言わずに僕の肩に置いた手に力をいれた。嘘を吐いたことに怒っているようだった。
嘘を吐いて、さらに作り物の笑顔を顔に貼り付けていることにも、とても怒っているようだった。
でも「大丈夫」の言葉の代わりに「ごめんね」と心配かけたことを謝れば更にユズは怒るだろう。
だから僕は偽物であろうと、嘘であろうと、心配しないでいいよと笑顔をつくっていることしかできなかった。
「…はい」
「探したんだよ」
「…はい」
僕に怒られるレイは俯いたまま頷いて、そしてもう一度「ごめんなさい」と謝った。
どうやら反省はしているらしい。
本当は、2度と知らない人間についていくなだとか、他人にもたくさんの迷惑と心配をかけるなだとか、まだまだ怒りたいことは山ほどあるけれど。
「もう1人でどっか行かないで」
これだけは、守ってほしい。
レイがいなくなってしまって、どれほど心配したことか。
「そうだぞー、椎のいとこ」
ユズが後ろから僕の右肩に手を置いた。
「椎が珍しく焦った表情をして探してた」
まるでいたずら好きな男の子のようにニカッと笑うユズの言葉を聞いて目を丸くするレイ。
「そうだよ」
今度は紗由が言った。
「レイちゃんが危険な目に合っていたらどうしようって、すごく心配してたんだよ」
「ほんと、こんなに焦った椎の顔なんて滅多に見たことねぇよ」
クククと笑うユズと穏やかな表情の紗由。
「みなさん、ごめんなさい」
レイはガバッと頭を下げた。
そしてニコッと笑ったんだ。
「これから気を付けます!」
にっこり微笑み合う3人。
けれど僕は笑わないで、まっすぐレイの名前を呼んだ。
「もう、いなくならないで」
少し掠れた小さい声だった。
ユズも紗由もハッとしたようにその表情を暗くした。
『…ごめんね…』
それはいつも、唐突に、鮮明に、脳裏に映る。
それはまるで記憶に呑み込まれるようで、だんだんと現実と過去が混ざって足元がふらふらしてくる。
脳裏を過る、いくつかの映像。
繰り返し思い返されてきた、僕の記憶。
苦しい、悲しい。
息が、詰まりそうだ。
誰か、助けて。
誰か…
「椎、大丈夫か」
ユズが駆け寄って、僕に声をかける。
その声で、脳は目覚めるようにクリアになった。
ユズやみんなの心配そうな顔が見える。
「うん、大丈夫」
僕は笑ってみせた。
やはりユズは何も言わずに僕の肩に置いた手に力をいれた。嘘を吐いたことに怒っているようだった。
嘘を吐いて、さらに作り物の笑顔を顔に貼り付けていることにも、とても怒っているようだった。
でも「大丈夫」の言葉の代わりに「ごめんね」と心配かけたことを謝れば更にユズは怒るだろう。
だから僕は偽物であろうと、嘘であろうと、心配しないでいいよと笑顔をつくっていることしかできなかった。