メリー*メリー
どきり、どきり
「椎」

「なに」

「なに、じゃないですよ」

むう、とレイは頬を膨らませて顔をこたつの上に乗っける。

「外に出て遊びたいって言ってるじゃないですか」

「だから一人で行ってきなよって言ってるでしょ」

だから、とレイは強く大きな言葉で言う。

「だから、1人じゃ雪だるまもつくれないから椎も一緒に遊ぼうって言ってるんですー!」

「じゃあ、諦めるしかないね」

「もー!」とレイはついに怒った。

「こんなに雪が積もっているのに、降っているのに、外に出ないなんて信じられないです!」

レイは窓の外をじっと見つめた。

「僕は、こんなに雪が積もってるのに、降ってるのに、外に出ようって感覚が信じられないよ」

僕は溜息を吐いた。

誰がこんな寒い中、しかも雪が降り積もっている中、外に出ようなんて考えるか。それはきっと子どもだけだろう。とても僕は外に出たくない。

「椎はもったいないです」

レイは僕の方を見ながら言った。

「雪が降り積もるのは1年の中で冬の、それもとても限られた時間だけなのに。それをこうしてこたつでぬくぬくと温まって過ごすなんて」

「そういうレイもこたつで温まってるでしょ」

「それは椎が遊んでくれないからです!」

僕は「だから」と溜息混じりに、左手で頬杖をつきながら言った。

「遊んでくればいいのに」

「1人で遊んでもつまらないから椎に遊ぼうって誘ってるんです!椎、いいでしょう?」

こたつに顎を乗せて、しかも、上目遣いで、そんなことを言う。全く、どこで覚えたんだ、そんな技。

僕はまた溜息を1つ吐くとこたつから右手を出して、その手をゆっくりとレイの顔に近づける。

そして右手の人差し指でレイの額を押した。

そんなに強くは押していないけれどレイは少し後ろにのけぞった。

「いっ、いきなり何をするんですか!」

レイは案の定怒っていた。

「それ、こっちのセリフだから」

「は!?」

意味が分からないと言わんばかりにレイは眉をひそめる。

「分かんないならいいよ」

「説明してください!」と騒ぐレイを横目に、僕は深々と降り積もる窓の外の雪を眺めた。
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