メリー*メリー


テレビ番組は華々しくその幕を閉じた。

そっと視線を移すと、案の定レイはすっかり眠っていた。

あんなに頑張って起きていたのに。これはもう起きる兆しが見られない。

「レイ、布団に入って寝るか、こたつにちゃんと肩まで入って寝てよ」

しかしレイは一向に起きる気配がない。夢の世界に旅立っている。

「だから早く寝ろって言ったのに」

その言葉も夢の世界には届かない。

僕は1つ息を吐き出すと、寒さに震えながらもこたつから脱却し、毛布をとってレイにかけた。

「風邪引いたらどうするつもりんだろう」

薬はどうするんだろう。人間と同じもので効果はあるのかな?でもレイはよく食べる。それって人間と同じ薬も大丈夫ってことなんだろうか?

そんなことを考えてると、もぞもぞと動いたレイは寝返りを打った。

そのせいで僕に背を向けていたのが僕に顔を向ける形になった。

幸せそうなその眠る顔はまさしく天使そのものだった。

綺麗な、とても綺麗な寝顔だった。

おだやかで、やさしかった。

レイには、年を越す前に起こすよと言ったけれど、この調子では起きそうにもないし、それに、この眠りを、無邪気で穏やかなこの天使の眠りを妨げることは罪悪感でどうにもできなくて、僕はレイを起こさずに、その眠りを見守ることにした。

『もうすぐ年越しですねー!』

テレビの中のミュージシャンが突然そんなことを言った。観客がワー!と盛り上がっている。

『一緒にカウントダウンしましょう!』

ミュージシャンと観客は声をそろえて大きな声で、20秒前からカウントダウンを始めた。

『20、19、18、17…』

僕はテレビから視線を逸らして、レイを見つめた。

綺麗な肌。まるで透き通っているみたいだ。僕はそっとレイの頭を撫でた。

こうして僕が、また誰かと暮らすことになるなんて、去年の僕は信じられなかっただろう。

しかもこんなに可愛い年下のような見た目をしている女の子で、さらに雪の妖精だなんて。

自分でも今の状況がおかしいとは分かっていた。いや、誰よりも理解しているつもりだ。

『14、13、12、…』

なんで2人暮らしなんかしているのか。

警察に突き出すことをしなかったのか。

今でもなぞは多いけれど、でも、今更レイを警察に突き出す気になんてなれない。

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