メリー*メリー
「しーい!」

明るい声に顔をあげると、レイは目を細めて元気いっぱいの顔で笑っていた。

「眉をひそめて、なんて顔するんですか!」

ちょっぴり上から目線。

いったい誰のせいでこんな顔をしてると思ってるの、と言おうとしたところでレイが言った。

「そんな顔してると、この1年がつまらなくなりますよ」

ニコッと笑う、レイ。

その笑顔が眩しくて、やさしくて。

「…そうだね」

僕もつられて笑ってしまった。


「ここだよ」

とりとめもない話をしていると、紗由の家に着いた。

たまご色の壁にオレンジの屋根、紗由の家は洋風の2階建てだ。

ピンポン、とインターホンを押すと、はーい、と紗由の返事が返ってきた。

ドタドタと足音が近づいて勢いよく玄関が開いた。

「椎くん、レイちゃん、いらっしゃい!」

紗由は笑顔で迎え入れてくれた。

「明けましておめでとう」

新年の挨拶を交わすと、僕はさっそく紗由に聞いた。

「で、どうしたの?いきなり僕達を家に呼ぶなんて」

「んー、ちょっとね?」

紗由は意味ありげに笑って、レイを見つめた。

レイは僕と紗由の視線を浴びながら、不思議そうに首を傾げた。

「椎くん、ちょっとレイちゃん借りていい?」

「え?」

僕の返事を待つ前に、紗由は家の中へとレイの腕を引っ張る。

「さ、紗由さん?」

「紗由?」

僕らは訳もわからず問いかけるけど、紗由はニイッと悪戯っ子が笑うように口の端を上げて人差し指を唇の中央にあてた。

「椎くんにはナイショ」

僕は首を傾げた。

紗由が何を考えているのか、その考えが全く読めない。

「椎くんはそこにいてね」

さ、行こう。

紗由は微笑みながらレイと共に家の奥へと消えていく。

僕はひとり、紗由の家の玄関に取り残された。
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