メリー*メリー
「お待たせしました~」

30分ほどすると、紗由はニコニコ、いや、ニヤニヤ笑いながらその姿を現した。

「いや、それはいいんだけど」

僕はそう言いながらレイの姿を探す。

てっきり紗由と一緒に来ているのかと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。

「あの、レイは?」

そう問いかけると、紗由はさらにニヤニヤした顔をする。

それは生暖かくて、けれど、ほんのり切なそうにも見えて。

…単なる僕の、ただの勘違いかもしれないけれど。

「じゃあ、レイちゃんを呼ぼうかな」

そして後ろを振り向きながら、いつもと同じ調子でレイの名前を呼ぶ。

…ああ、やはり僕の勘違いだった。

ほっと、少し安心していると、不意に、がちゃり、と控えめに、遠慮がちに、奥のドアが開いた。

ぶわり、とその瞬間、僕のところを風が吹きぬけたような心地がした。

驚きで、目を見開いた。

奥のドアから出てきたのは、レイだった。

けれど、いつものレイではなかった。

いつものレイは明るくて、元気で、まるで中学生、あるいは、小学生みたいで、何と言うか、年の離れたいとこ、という感じがしている。

それなのに。

さくらんぼ色の唇、ぱっちり大きな瞳。

くるくると綺麗にウェーブがかかった髪。

今僕の目の前にいるレイは、いつもの、年の離れたいとこ、という感じのするレイではなかった。

何と言えば正しいか分からないけれど、言うならば、そう。

年下の可愛い女の子。

「…椎、あの」

レイは遠慮がちに僕を呼んだ。

何を言ったらいいか分からず、僕は黙り込んでしまった。

そんな僕たちのぎこちない様子を見た紗由はふふふ、と笑みをこぼした。

「驚いた?」

してやったり、と言わんばかりの悪戯っ子のような笑顔をしている。

「紗由、これは…」

「レイちゃんにね、メイクしてあげたんだ」

ああ、なるほど。

僕はようやく納得した。

それでいつものレイより大人っぽくなって、妹というよりは女の子という感じがしているのか。
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