メリー*メリー
「んだよ、赤点取ったくらいで補習なんて…」

来週試合なのに、と彼は叫んだ。


「赤点取るからでしょ」


僕は溜め息を吐いた。


「テスト前、せっかく勉強見てあげたのに。しかも教科はユズがいちばん嫌いな英語」


「あぁ、ありがとな。英語は教えてもらったお陰でなんとか赤点は免れた」


それならどうして補習なんかする羽目になるんだ、と僕が突っ込むより前に、ユズがその答えを言った。


「でもな、数学と国語が駄目だったんだよ」

「ダメじゃん」と僕は呆れた。

「お前と違って俺は勉強は嫌いなんだよ」

恨めしそうな目で見られたが、僕だって天才的に勉強ができるわけじゃない。

そこまで勉強が嫌いなわけじゃなく、結果もそれなりについてくるくらいで、あまり人と大差ないのだ。


「お前はなんでも器用にこなすからな」


ユズは言った。


「手先の細かいこととか、ほんと得意だよな。俺はそういうのは大嫌いだし、それより体を動かす方がずっといい」


「ユズはそうだろうね」


僕は少し笑いながら頷いた。

「あ、もうこんな時間か。俺、もう行かないと」

不意に時計を見上げたユズは慌ててスクールバッグを肩にかけ、じゃあな、とユズは片手を挙げると同時に教室を出て行った。

わーっと喋ってパッと去っていく彼は本当に嵐みたいなやつだ。

僕は溜息を吐きながら、荷物を手に取ると静かに教室を出た。
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