メリー*メリー
「うわ、紗由が言っていたとおりだ」
僕は思わずため息を吐いた。
神社に到着した僕たちは、そのあまりの人だかりに驚きげっそりしてしまった。
若い男女、家族連れ、友達連れ。
昨年もこの神社で初詣したけれど、こんなにもたくさんの人はいなかったのに。
「すごい人ですね~」
レイも辺りを見渡しながら呟くように言った。
「ほんとだね」
僕は頷きながらレイの手を握った。
レイは驚いたように僕を見上げた。
「なに?」
僕は溜息をひとつ吐きながら歩き出した。
「こんな人混みの中、迷子になったら困るから」
「でも!」
「クリスマスツリーを見に行った時のこと、覚えてないわけじゃないでしょう?」
僕が意地悪くそう言うと、レイはぐっと黙ってしまった。
言いたいことはあるのに言えないし、恥ずかしい。そんな感情がいっぱいいっぱいになっていて、頬を赤く染めている。
それがすごく可愛らしかった。
「あれ?勝手にふらふら歩いて迷子になって、おまけにユズにも紗由にも迷惑かけたのは、どこのだれだったかなあ?」
「わ、分かってますから! 反省してますから!」
レイが必死に赤い顔をして反論してくるのが面白くて、僕は吹き出してしまった。
「な、何を笑ってるんですか!」
案の定レイは怒り出す。
「ごめん、ごめん。レイが面白くて」
何が可笑しいんですか、とレイはまた怒っている。
「あはは、ごめんって。意地悪して悪かったよ。さ、初詣に行こうか」
そして僕らは手を繋いだまま、沢山の人が列を作っているその最後尾に並んだ。
並んでいる間も「椎の意地悪!」だとか「椎のバカ!」だとか、レイの暴言は止まらなかった。
けれど、なぜだかわからないけど、その暴言すらも愛おしく思えてしまって、僕はレイの発言を聞き流していた。
「あ、順番回ってきたね」
僕らの前に並んでいた人達がお祈りを終えて去っていく。
僕は五円玉をレイに渡して、お賽銭箱の前に立った。