メリー*メリー
「椎、今日は何をするんですか?」

レイが突然そんなことを聞いた。

僕は箸を止めた。

「椎?」

首を傾げるレイに、僕は重い口を開いた。

「今日は、今日の予定はもう決まってるんだ」

「そうなんですか。何をするんですか?」

楽しそうな顔をしてレイは言う。

「レイも一緒に来てくれる?」

答えになっていない僕の問に、レイは不思議そうな顔をしたまま頷いた。

朝食を食べ終わって食器を片づけ終わると、レイがキッチンの方にやってきて僕の様子をうかがい見ていた。

「どうしたの」

そう声をかければ、「何でもないです」という返事。

「何か用事でもあるの?」

溜息混じりにそう尋ねれば、「いえ、あの」と返ってきた。

「言いたいことがあるならはっきり言ってよ」

僕は溜息を吐いた。それはレイに対してではなく、自分自身に対してだ。

今日がこんな日だからといって、何の関係もないレイに八つ当たりするような態度を取ってしまう、ちっぽけな自分が、心底嫌になった。

「…何もないんです。でも」

「でも?」

「今日の椎は、いつもより元気がないように見えるから」

僕はハッと目を見開いた。

「そんなことないよ」

僕はそう言って笑った。

「それよりレイ、一緒に来てくれるんでしょう? なら準備しないと。今日は遠くまで出かけるからね。忘れ物がないようにしてよ」

さあさあ、行った行った。

ぼくは追い立てるようにしてレイをキッチンから追い出した。

「え、ちょっと、椎!?」

再び一人になったキッチンで、僕はまた溜息を吐いた。

どうしようもない、こんな自分が、ひどくみっともなく思えた。

…本当に、どうしようもない。

料理はあの日から多少はうまくなった。洗濯物も干せるようになった。独りで生活できるようになった。

それでも僕は、あの日から何も変わっていない。あの日から何も、変わっていないんだ。


僕は年が明けてから初めて制服を着た。

何の特徴もない、黒の学ラン。それでも中学校の時は紺のブレザーだったから、何の特徴もない学ランでも着ることができて嬉しいと思う。

「椎?」

学ランのボタンをとめていると、扉の方からレイの声が聞こえた。
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