メリー*メリー
「それにしても椎くん、久しぶりね~。1年ぶりかしら?」

「いえ、去年は春にも一度来たので」

そうだったわね、とおばちゃんは懐かしそうに笑った。

「そうだった、去年は高校に入学することが決まって、だから制服を見せに行ってあげたんだったわね」

僕は笑うだけで何も言わなかった。

「あら、今日は可愛らしいお嬢さんと一緒なのね~!」

おばちゃんの意識はレイに移った。

レイは「こんにちは」と小さく、けれど笑顔で挨拶した。

「あら~!本当に可愛らしいわね!」

お人形さんみたい、とおばちゃんは興奮している。

そして僕の方をニヤニヤ見ながら「彼女さん?」と問いかけた。

「「違います!」」

全力で否定した。

レイも否定したらしく、声が重なってしまった。

説得力があるのかないのか分からないが、どうにか違うと分かってほしい。

「あら、残念」

おばちゃんはあからさまにつまらない、という表情をした。

「おばちゃん、僕達おなか減ってるんだ。注文してもいいかな?」

「はいよ。何にする?」

厨房の上の古びたメニューを見ながらどれにしようか考えているレイに「どれにする?」と尋ねる。

「椎は決まったんですか?」

「うん」

僕が頷くと、レイは更に迷いだしたようだった。少し焦っているようにも見える。

「どれも美味しいから、気になるのを頼みなよ」

しかしレイは「う~ん」と考え込んで、それからパッと顔を上げた。

「椎と同じものが食べたいです!」

「僕と同じの?」

「はい!」

レイの目はキラキラしている。

「本当にいいの?」

「椎と同じご飯を食べたいんです!」

どうしてそんな思考になるのか僕には理解できないが、レイがそれでいいというのなら。

「おばちゃん、いつもの2つお願いします。1つはごはん少な目で」

はいよ、とおばちゃんの優しい返事が聞こえた。

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