メリー*メリー
「あのひとの、好きな花」
あのひとの好きな花は、知っている。
でも、あの花はまだ咲かない。
まだこの時期には、咲かないんだ。
その時、ぱっと目に映ったのは白百合だった。
「白百合にしようかな」
僕はその雪みたいな白を見つめながら呟いた。
「白百合か、いいね~」
ハナさんは僕の独り言に大きな声で返事した。
僕とレイはその声に驚いてびくりと肩を上げた。
「でも毎年白い花を選ぶんだね」
ハナさんは不思議そうな、でも面白そうな声でそう言った。
「あのひとが好きな花、白色の可愛い花なんです。でもまだ咲かないから、代わりにあの花と同じ白色の花にしようと思って」
へえ、とハナさんは相槌をうった。
「でも、なんだか寂しいね。白だけって」
色がなくてさあ、とハナさんは言った。
「白百合5本ください」
僕が話を切り上げるように代金を手渡すと「確かに」とハナさんは笑って言った。
「じゃあ、今準備するからちょっとの間、店の中でも見て待っててよ」
そういうが早いか、ハナさんは白百合の入ったバケツの中から白百合を5本取ると、さっさと店の奥のカウンターにある作業台で花束にしてくれた。
「お待たせしました」
僅か1分ほどでハナさんは花束をつくってくれた。
「さすがハナさん。早いですね。全然待ってないですよ」
僕がそう言うと、「そりゃあ良かった」とハナさんは笑った。
「あれ、僕が頼んだのは白百合5本だけですよね」
僕はハナさんから手渡された花束を覗きながら言った。
白百合の間にはカスミソウと薄桃のカーネーションがあった。
「ああ、それはあたしからのプレゼント」
ハナさんは笑いながら言った。
「そんな、悪いですよ」
僕はそういうけれど、ハナさんは「いいから、いいから」と全然取り合ってくれない。
「受け取ってよ。あたしからの気持ちだから」
「でも」
僕の話を遮るようにハナさんは話し始めた。
「嬉しかったんだよ」
その言葉に、僕の声は引っ込んでしまった。
「椎くんが笑ってて、嬉しかったんだよ」
そう微笑まれてしまって、僕は何も言葉にできない。
「ありがとう」
ハナさんはレイに視線を移すと微笑んだ。
レイはハッとしたように俯いていた顔を上げた。
「きっとあなたのおかげだね」
レイは訳が分からないという様子で首を傾げた。
あのひとの好きな花は、知っている。
でも、あの花はまだ咲かない。
まだこの時期には、咲かないんだ。
その時、ぱっと目に映ったのは白百合だった。
「白百合にしようかな」
僕はその雪みたいな白を見つめながら呟いた。
「白百合か、いいね~」
ハナさんは僕の独り言に大きな声で返事した。
僕とレイはその声に驚いてびくりと肩を上げた。
「でも毎年白い花を選ぶんだね」
ハナさんは不思議そうな、でも面白そうな声でそう言った。
「あのひとが好きな花、白色の可愛い花なんです。でもまだ咲かないから、代わりにあの花と同じ白色の花にしようと思って」
へえ、とハナさんは相槌をうった。
「でも、なんだか寂しいね。白だけって」
色がなくてさあ、とハナさんは言った。
「白百合5本ください」
僕が話を切り上げるように代金を手渡すと「確かに」とハナさんは笑って言った。
「じゃあ、今準備するからちょっとの間、店の中でも見て待っててよ」
そういうが早いか、ハナさんは白百合の入ったバケツの中から白百合を5本取ると、さっさと店の奥のカウンターにある作業台で花束にしてくれた。
「お待たせしました」
僅か1分ほどでハナさんは花束をつくってくれた。
「さすがハナさん。早いですね。全然待ってないですよ」
僕がそう言うと、「そりゃあ良かった」とハナさんは笑った。
「あれ、僕が頼んだのは白百合5本だけですよね」
僕はハナさんから手渡された花束を覗きながら言った。
白百合の間にはカスミソウと薄桃のカーネーションがあった。
「ああ、それはあたしからのプレゼント」
ハナさんは笑いながら言った。
「そんな、悪いですよ」
僕はそういうけれど、ハナさんは「いいから、いいから」と全然取り合ってくれない。
「受け取ってよ。あたしからの気持ちだから」
「でも」
僕の話を遮るようにハナさんは話し始めた。
「嬉しかったんだよ」
その言葉に、僕の声は引っ込んでしまった。
「椎くんが笑ってて、嬉しかったんだよ」
そう微笑まれてしまって、僕は何も言葉にできない。
「ありがとう」
ハナさんはレイに視線を移すと微笑んだ。
レイはハッとしたように俯いていた顔を上げた。
「きっとあなたのおかげだね」
レイは訳が分からないという様子で首を傾げた。