メリー*メリー
ハナさんはレイの頭をなでながら微笑んでいた。

「本当に良かった」

ハナさんはかみしめるようにそう呟いた。

その言葉が優しくて、胸にしみわたる。

「ありがとうございました」

僕はハナさんにそう言った。

「おまけ、嬉しいです」

ハナさんは笑って「またのお越しをお待ちしています」と丁寧口調でそう言った。

「またお邪魔します」

僕とレイは頭をさげて、ハナさんに見送られながら次の目的地へと先を急いだ。


「椎、どこにいくんですか?」

レイは遠慮がちにそう尋ねる。

「会いたい人がいるんだ」

そう言うとレイはうつむいて少し黙る。

「会いたい人、ですか」

「そうだよ」

「その花束を渡すんですか」

「そうだね」

そう、ですか。

レイはまたうつむいてしまった。

「どうしたの」

「…別に」

「別に、じゃないから聞いてるんでしょ」

僕は溜息を吐いた。

「何かあったの?」

「…ありました」

「なに?」

「…それは」

そのとき、僕とレイの隣をトラックが大きな音を立てて通り過ぎていった。

「何か言った?」

レイは何か言いかけて、やめたようだった。

「いえ、何も」

レイはそう言って笑って、僕の前に出るとくるりと回った。

「さあ、行きましょ!」

「えっ、ちょっと!」

レイは僕の腕をひっぱっていく。

「待ってよ、レイ!」

僕は慌ててレイを止める。

「レイは次どこに行くのか分かってないでしょ!」

そう叫ぶと、レイはふと立ち止まって僕の方を見た。

「そうでした!」

レイは頭に手を当ててあははと笑った。

その笑顔がすごくかわいくて、思わずつられて笑ってしまった。

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