メリー*メリー
今シーズン最初の雪だ。

まさか今日降るなんて思っていなかった。朝のニュースでも確率は50パーセントだったはずなのに。あぁ、こんなことなら雪が降る前に早く帰れば良かった。

そんなことを思いながら僕は呆然と雪を見ていた。

雪の様子を見てはっと気づく。


この雪は、牡丹雪。


水分を多く含んだ、粒の大きい、天使の羽根にも似た雪。

ポケットから手を出して、掬うように手のひらを空に向ける。


ひらり、ひらり。


ひとひらの雪が、ゆるりゆるりと舞うように、そっと手のひらに落ちた。

手に落ちた雪は、すぐにじわりと溶けてしまう。

簡単にその白さを失って、透明になる。


その儚さはあのひとの笑顔に似ていて、胸が苦しくなった。

思わず下を向いて目を閉じた。


そうやって逃げようとしても、あのひとの笑顔がすぐに脳をいっぱいにしてしまう。


__ああ、さっきまで感傷に浸っていたせいだ。

こんなにもあなたを思い出してしまうなんて。


もうすっかり水になってしまった雪をぎゅっと握りしめ、空を見上げる。


そのとき、鳥よりも大きな物体が見えた。

よく目を凝らして見ると、それは少女だった。

目を見開く。


まるで雪と戯れるように、楽しそうに

少女が舞い降りた。


それはまるで天使のようだった。


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