メリー*メリー
「それで、紹介したいんだけど、この子、レイっていうんだ」

僕はレイに目配せした。

するとレイは墓石に向かって「レイです」とお辞儀した。

「えっと、あの、椎の家で居候してて、その、椎にはとてもお世話になってます!」

レイは墓石の前だというのにすごく緊張しているようで、あたふたしていた。

その様子がなんだかおかしくて、可愛くて、思わずぷっと吹き出してしまった。

「何緊張してるの」

「だって!」

レイは顔を真っ赤にして反論してきた。

「ほんと、レイって面白いね」

「どこがですか!?」

条件反射の勢いでレイは反論してきた。

「人が一生懸命になっているというのに!信じられません!」

レイは少し怒ったように言う。

「一生懸命だから面白いんだよ」

「椎、性格悪いですね!」

「なに言ってるの、レイだからだよ。他のひとなら笑わないけど」

「それなおさら性質が悪いですよ!」

お墓の前なのにギャーギャー言い合う。

…父さんや母さんが見ていたら驚くだろうな。

自分で言うのもなんだけど、いつも僕は静かな方だ。

特に両親のお墓の前で、笑ったり騒いだり、そんなことできない。

いつも暗い表情をしていると思う。

それなのに、お墓の前でも笑えるのは、騒げるのは、レイのおかげだと思う。

「椎、聞いてますか!?」

定食屋のおばちゃんも、ハナさんも思っている通り、レイのおかげなんだ。

レイがいてくれたから、笑顔になれるんだ。

「ありがとう、レイ」

僕はレイにそう言った。

「え?」

「ありがとう」

レイは不思議な顔をしている。

どうしたんですか、と言いかけたレイの声に被せるようにして「もう、行こうか」と僕は言った。

「父さんと母さんに顔出しもできたしね」

そしてもう一度2人の墓石を見つめて微笑んだ。

「また来年来るよ」

その時ふわりと風が頬をかすめた。

冷たい冬の風ではなくて、頬を撫でるような、やさしい風。

僕は空を見上げて笑った。

また、来年。

そして僕らは2人の墓を後にした。

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