メリー*メリー
僕の声は、震えていた。


「どうすればいいの。どうしたらいいの、僕は」


荒(すさ)んで氷みたいに冷たいこの心を、

冬の風みたいに厳しいこの現状を、

どうしたら。


そんなこと、幼いレイに言ったところでどうしようもないと分かっているのに。



「…どうしたらいいのか、私には分からないです」


レイは目を伏せて穏やかに話し始めた。


「ただ、私は、椎のその寂しいって思う心を、辛いって思う心を、どうか無視しないでほしいって思うんです。

それが気持ちを無視しているより辛いと分かっているけれど」


そしてレイは僕の目を見つめて話し出した。


「冬は、いつか終わります。

冬が終わったら、春が来ます。

春になったら、雪も氷もとけて消えてなくなって

新しい生命(いのち)が芽吹きます。

そしてそれは育って、やがて花咲く」


そして花がほころぶように、ふわりと笑った。


「必ず、冬は終わります」


レイは僕の手を握った。


冷たいけれど、暖かい手。


僕より小さいのに、僕を包み込む手。


涙が、流れた。


情けないくらい肩を震わせて、涙が頬を伝った。


レイはずっと僕の手を握ってくれていた。


「あり、がと…」


伝えた感謝の言葉は、掠れて震えていた。



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