メリー*メリー
きっと蕾はやがて花開いて、それはそれは美しく咲き誇るだろう。
けれど、それはまだ先の話。
「もう少しだな」
この張りつめた冷たい空気が、もう少し和らぐまで。
その時まで、蕾は固く結ばれたまま。
「2人で見たいな」
ふわり、嬉しそうに笑うレイの顔。
それを思うと心が温かくなる。
…会いたい、早く。
そう思うよりも先に、足は動いていた。
紗由の家へ。
レイのいるところへ。
ピンポーン、と玄関のチャイムを鳴らせば、すぐに紗由は玄関を開けてくれた。
「いらっしゃい」
目を細めて、なんだか同情的な笑顔をしている。
「ごめんね、レイが」
紗由は首を横に振って、微笑んだ。
「いいの、いいの。可愛いから」
可愛いから?
僕は首をかしげていたけれど、紗由はそんな僕に構うことなく振り返ると「レイちゃん」と呼んだ。
すると玄関の奥から、レイが姿を見せた。
奥はリビングだろうか、レイはドアを少しだけあけてそこから右目だけでこちらの様子をうかがっている。
きっと僕に怒られると思って、それが怖いのだろう。
なんだかそんなレイの姿を見ると可愛いなと笑みがこぼれてしまう。
「レイ」
僕は優しく微笑んで名前を呼んだ。
けれどレイはほんの少し後退りをしてドアの隙間を狭めた。
警戒心を露にしている。
「怒ってないよ」
するとレイは目を見開いて、また視線を落とした。
「でも…」
ごにょごにょと独り言のような言い訳のような言葉を並べている。
「おいでよ。一緒に帰ろう」
僕が微笑むとレイは静かに、ゆっくりとドアを開けて、おずおずと玄関の方にやってきた。
顔は俯いたまま、なんだか気まずそうな、ばつが悪そうな顔をしている。
「なんで、ですか」
レイは俯いたまま掠れた小さな声で聞いた。
「何が?」
僕が首を傾げると、レイは顔をあげて怒ったような声で言った。
「どうして、怒ってるんじゃないんですか!?」
そこで、僕は気づいた。
レイは怒っているわけじゃなかった。
ただ、感情が爆発しているだけなんだと分かった。
その涙が物語っていた。
「怒ってないよ」
僕はかがんでレイと同じ目線で見つめた。
彼女の涙は、感情は、あまりにも真っ直ぐだ。
あまりにも真っ直ぐで、強くて、脆い。
だからこそ、その真っ直ぐさを、抱きしめたくなるんだ。
けれど、それはまだ先の話。
「もう少しだな」
この張りつめた冷たい空気が、もう少し和らぐまで。
その時まで、蕾は固く結ばれたまま。
「2人で見たいな」
ふわり、嬉しそうに笑うレイの顔。
それを思うと心が温かくなる。
…会いたい、早く。
そう思うよりも先に、足は動いていた。
紗由の家へ。
レイのいるところへ。
ピンポーン、と玄関のチャイムを鳴らせば、すぐに紗由は玄関を開けてくれた。
「いらっしゃい」
目を細めて、なんだか同情的な笑顔をしている。
「ごめんね、レイが」
紗由は首を横に振って、微笑んだ。
「いいの、いいの。可愛いから」
可愛いから?
僕は首をかしげていたけれど、紗由はそんな僕に構うことなく振り返ると「レイちゃん」と呼んだ。
すると玄関の奥から、レイが姿を見せた。
奥はリビングだろうか、レイはドアを少しだけあけてそこから右目だけでこちらの様子をうかがっている。
きっと僕に怒られると思って、それが怖いのだろう。
なんだかそんなレイの姿を見ると可愛いなと笑みがこぼれてしまう。
「レイ」
僕は優しく微笑んで名前を呼んだ。
けれどレイはほんの少し後退りをしてドアの隙間を狭めた。
警戒心を露にしている。
「怒ってないよ」
するとレイは目を見開いて、また視線を落とした。
「でも…」
ごにょごにょと独り言のような言い訳のような言葉を並べている。
「おいでよ。一緒に帰ろう」
僕が微笑むとレイは静かに、ゆっくりとドアを開けて、おずおずと玄関の方にやってきた。
顔は俯いたまま、なんだか気まずそうな、ばつが悪そうな顔をしている。
「なんで、ですか」
レイは俯いたまま掠れた小さな声で聞いた。
「何が?」
僕が首を傾げると、レイは顔をあげて怒ったような声で言った。
「どうして、怒ってるんじゃないんですか!?」
そこで、僕は気づいた。
レイは怒っているわけじゃなかった。
ただ、感情が爆発しているだけなんだと分かった。
その涙が物語っていた。
「怒ってないよ」
僕はかがんでレイと同じ目線で見つめた。
彼女の涙は、感情は、あまりにも真っ直ぐだ。
あまりにも真っ直ぐで、強くて、脆い。
だからこそ、その真っ直ぐさを、抱きしめたくなるんだ。