メリー*メリー
*
「ただいま」
家に帰って、玄関のドアを開ける。
けれどいつも聞こえてくるはずの声は聞こえて来ない。
「レイ?」
僕は靴を脱ぎながら、ゆっくり一歩一歩確かめるように足を進める。
なんだか、胸騒ぎがする。
嫌な予感が、する。
「レイ、レイ!」
台所を通りすぎ、リビングへ続くドアを開けたら。
「れ、い」
そこにはちゃんとレイがいた。
白いワンピースに白いポンチョを羽織って、正座で佇んでいる。
そして黙ったまま僕を見上げていた。
「どうしたの?具合が悪いの?」
慌てて駆け寄るけど、レイは首を横に振った。
「どうしたのさ、レイ?」
その手を握ろうとした。
けれど僕の手はレイの手をするりとすり抜けた。
「レイ…?」
レイは申し訳ないと言いたそうに、眉を潜めて辛そうな顔をしていた。
「レイ、どういうこと?黙ってないで、教えて。お願い」
レイは苦しそうに俯いた。
「…椎、知っていました? 私がこっちの世界に来て、もう4ヶ月が経ってるんです」
時の流れって早いですね。
レイは小さく笑った。
笑ったけど、でも辛そうに笑うから、僕まで辛くなる。
「…言いましたよね、初めて会った時に、私は雪の精だって」
「それは、聞いたけど」
「これも言いましたよね。どうしても来たくてここに来たんだって」
「それも、聞いたけど」
「でも、その理由は言ってなかったですよね?」
僕は首を横に振った。
「どうしても来たかったって…」
「はい。どうしても来たかったからです。
会いたい人が、いましたから」
レイは俯いたまま話を始めた。
「むこうの世界で、仲良くなったある人が、ある男の子の話をずっとしてくれました。
誰より優しくて、誰より強くて、だけどちょっぴり放っておけない男の子。
私はその人が気になって、気になって、会いたくなりました。
会いたくて、会いたくて、いてもたってもいられず、みんなに大反対されながら、非正規ルートでこっちに来たんです」
本当は、正規ルートで来たかったんですけどね、とレイは小さく笑って付け加えた。
「ただいま」
家に帰って、玄関のドアを開ける。
けれどいつも聞こえてくるはずの声は聞こえて来ない。
「レイ?」
僕は靴を脱ぎながら、ゆっくり一歩一歩確かめるように足を進める。
なんだか、胸騒ぎがする。
嫌な予感が、する。
「レイ、レイ!」
台所を通りすぎ、リビングへ続くドアを開けたら。
「れ、い」
そこにはちゃんとレイがいた。
白いワンピースに白いポンチョを羽織って、正座で佇んでいる。
そして黙ったまま僕を見上げていた。
「どうしたの?具合が悪いの?」
慌てて駆け寄るけど、レイは首を横に振った。
「どうしたのさ、レイ?」
その手を握ろうとした。
けれど僕の手はレイの手をするりとすり抜けた。
「レイ…?」
レイは申し訳ないと言いたそうに、眉を潜めて辛そうな顔をしていた。
「レイ、どういうこと?黙ってないで、教えて。お願い」
レイは苦しそうに俯いた。
「…椎、知っていました? 私がこっちの世界に来て、もう4ヶ月が経ってるんです」
時の流れって早いですね。
レイは小さく笑った。
笑ったけど、でも辛そうに笑うから、僕まで辛くなる。
「…言いましたよね、初めて会った時に、私は雪の精だって」
「それは、聞いたけど」
「これも言いましたよね。どうしても来たくてここに来たんだって」
「それも、聞いたけど」
「でも、その理由は言ってなかったですよね?」
僕は首を横に振った。
「どうしても来たかったって…」
「はい。どうしても来たかったからです。
会いたい人が、いましたから」
レイは俯いたまま話を始めた。
「むこうの世界で、仲良くなったある人が、ある男の子の話をずっとしてくれました。
誰より優しくて、誰より強くて、だけどちょっぴり放っておけない男の子。
私はその人が気になって、気になって、会いたくなりました。
会いたくて、会いたくて、いてもたってもいられず、みんなに大反対されながら、非正規ルートでこっちに来たんです」
本当は、正規ルートで来たかったんですけどね、とレイは小さく笑って付け加えた。