プラチナ思考
何事かと見れば、床を走るGがいた。
美月も顔を青くしてリビングから退室した
『美月、部屋にいな。今日朝ごはんなしかもしれないから覚悟しといて』
研磨兄さんが、優しくそう言うと翡翠を美月にあずけた。
母も、とは思うがソファーの上から動けそうにない
むしろキャーキャー言いながら拓磨に指示を出している
母はGが苦手、
いつもは飛んでくる父の姿はない
『父さん、出張だ。』
そうして気づく父の存在
いつも、母にベッタリなためセットで考えてしまう
例えば、母の誕生日なのに父とお揃いのものを買ったり。
出かけるにしても父は母を連れていく
海外出張は別だ
いや、別になった、
数年前まで一緒に行っていたのだが、父は母中心に考えすぎてしまい仕事に少しばかり支障をきたしてしまったらしい
詳しくは聞いていないが、
仕事には絶対手を抜かない父が、なぜそうなってしまったのかは誰に聞いても答えてくれない。
秘書の影山さんが、苦笑いしながらそのうちわかりますよ。と言ってくれたのを最後にその話題は美月の中から忘れ去られていた。
『ひーくん。お部屋行こうか?』
『うん!』
昨日から父不在。
兄ふたりがしっかりしなきゃと意気込み虫退治をした朝だった
『そう、それでごはん抜きのお弁当ぬき。』
『うん。でも、研磨兄さんが翡翠と私におにぎり握ってくれたの。』
朝のぶんだけね。と、つけくわえ美月はおかかのおにぎりを食べる
『研磨兄さんさすが。』
『母さんは、戦意喪失って言って梓さんのとこ行ったよ?』
『え、私知らないよー。』
『愛香、聞いてないの?』
『うん。』
愛香と、美月の母親は友達。
昔からの付き合い。と聞いていて、家族ぐるみの付き合いもある
『ま、相変わらずだね。』
『でしょ?』
『快斗さんいたらお弁当ゲットしてたんじゃない?』
『たぶんね。あ、今日の夕飯はすき焼きだって』
愛香も来るでしょう?と当たり前に聞く彼女。
親友とのご飯は楽しい
ましてや家族同然と接してくれている北條家のみんなが大好きだ。
『うん。行く。』
『良かった!じゃあ母さんに伝えておくね!』
『あ、北條さん。』
お昼休みでワイワイしていた教室が少しだけ静かになった。
その理由は今話しかけてきた彼。
水野葵くん。生徒会長で俗に言うイケメン
『こんにちは、水野くん。どうしたの?』
食べていた手を止めて微笑む美月は親友の愛香から見ても美しくため息が出そうだった
『昨日のことなんだけど、ごめんね。昼休み中
あれ、今日はお弁当じゃないんだ』
美月の手元を見て物珍しそうに彼は続けた。
『にしても、北條さんみたいな人でもコンビニのおにぎり食べるんだ。あ、それとも高級なおにぎり?』
少し馬鹿にしたような言い方だった。
隣にいた愛香は、口を挟もうとしたが美月は優しく微笑んで答えた
『あら、私は普通よ?
コンビニも行くし。ファミレスも行く。
家が何だか関係ないよ?
水野くんのお宅は高級住宅街に住んでるもんね。
水野くんの方が縁のない場所じゃないかな?
それで、昨日のことって?』
さらっと返されてすごく悔しそうな水野くん、
彼は水野グループの跡取り息子。
社会勉強のためにこの平凡な中学に入学してきた。
その時はさすがに、先生方も驚きを隠せなかったらしい。
水野グループのお子様が入学してくるのもそうだが、あの北條家もなんて聞いたことないぞ、となったらしい。
美月の母、菜月は
ごく普通の教育をしてください。特別扱いしないでください。と言った。
そして夫である快斗も
妻のいうとおりに。皆さんと同じように教育、美月のやりたいように進めさせたいと思うのが私たち夫婦の考えであって、家柄とか無視して構わない。と言ったらしい。