王道恋愛はじめませんか?
『――真山~!いつまで電話してんだよ、もうすぐ出発時刻だぞー!』
「!」
すると、遠くで私を呼ぶ泊くんの声が聞こえた。
それにつられて顔を上げた先には、私に手を振る泊くんと、その横で満足げに御朱印を広げて笑う城田ちゃん。
どうやら、迷わずに御朱印をもらうことはできたようだ。
手元の腕時計に目をやれば、確かに日光東照宮を出発する時刻の10分前だった。
「今行くー!」
ガヤガヤとうるさい雑踏に負けないように、声を張り上げて言うと、泊くんから待ってるから早くしろ、と返ってきた。
「ごめんなさい、嘉人くん。私、もう行かなきゃ。」
『っ、う、うん。いきなりな話をしてごめんね。』
「ううん。楽しみにしてる。…嘉人くんも、お土産楽しみにしててね。いっぱい買って帰ってくるから。」
もうちょっと嘉人くんと話したいという気持ちは山々だけど、バスに乗り遅れるわけにはいかない。
名残惜しい気持ちで嘉人くんとの電話を切った私は、すぐに泊くんたちの元へと駆け寄った。
「ごめん、お待たせ!」
『おう、遅れると幹事がうるさいから、早く行こうぜ。』
先を歩く泊くんの後ろを歩き、隣で御朱印をもらったという城田ちゃんの楽し気な声を聞きながら、早くも私は嘉人くんのお土産をどうしようかと悩み始めるのだった。