王道恋愛はじめませんか?
『…ごめん。これはちょっと、人が多すぎたね。』
お互いに駆け寄って、距離を縮めた瞬間、彼が眉をハの字にさせて笑う。
「ううん。…お疲れさま。仕事、順調?」
取り敢えずこの人込みから抜け出そうと、彼が車を止めているという近くのパーキングエリアまで歩いていく。
『うん。…でも、またこの後、スタジオに戻らないと。』
「シングルのレコーディング、だっけ?」
昨日もらったメールに、今日の仕事の内容は聞いていたから、元々会える時間は少ないだろうとは思っていた。
正直な気持ちでいえば淋しいけど、そこは大人として、引き下がるべきところだろう。
まして私は彼にとって友達ラインぎりぎりにいる身だ。
もっと一緒に居たいなんてワガママを言う権利はない。
『うん。もうレコーディングは終わったんだけど、9月から始まるアリーナツアーの打ち合わせをやるってメンバーがやる気になっててさ。』
「…そっか。大変そうだけど、充実してて、楽しそうだね。」
それは、隣を歩く彼の横顔見れば、一目瞭然だった。
人目を気にしてか、いつもより深くキャップを被っていても分かってしまう。
『そう?まぁ、でも…楽しいのは事実かな。』
そう言ってハニかんで見せた彼を見て、なんだかんだと言いながらも、Shineのことが大好きなんだろうなと思った。