王道恋愛はじめませんか?
――週末の合コンに行くことが決まってから数日後。
私は昼間から家の中でてんやわんやしていた。
朝、いつもより早く起きたはずなのに、メイクやら今日着ていく服選びをしていたらあったという間に時間は過ぎていき、気付けば12時過ぎ。
刻々と約束の時間は迫っているのに、まだ準備に追われていた。
「えっと、ハンカチよし、ティッシュよし、メイク直しは入れたし、あとは――あっ、髪、崩れてないかな?」
リビングにある等身大の鏡の前で最終チェックをしていたとき、ダイニングテーブルの上に置きっぱなしだったスマホが震えた。
「えっ、もうそんな時間…!?」
パタパタと履いているスリッパの音を立てながら、未だに震えているスマホに駆け寄ると、嘉人くんからの着信を告げる画面が映し出されていた。
「もっ、もしもしっ」
『おはよう。』
「おっ、おはよう…!」
電話に出ると、すぐに嘉人くんの声が私の鼓膜を叩いた。
『もう準備はできた?今、この前送った場所に来てるんだけど』
その言葉につられて視線をダイニングの窓の外に向ければ、家の塀の外から車のエンジン音が微かに聞こえてきた。
今日は、神田さんを含めた、初めての食事会の日だ。
「いっ、今行く…!もうちょっと待っててね!」
『うん。全然慌てなくていいから、ゆっくりおいで。』
いつもみたいに穏やかな声で優しい言葉をかけてくれる嘉人くんにありがとうと告げた私は電話を切ってすぐ、用意していたバッグを肩にかけて、玄関へ向かう。
「あっ、靴選ぶの忘れてた…!」
玄関前でまたアタフタしつつも、なんとか外出の準備を整えた私は、嘉人くんが待ってる車まで急いだ。