王道恋愛はじめませんか?
嘉人くんから漂うシトラスな香りに包まれて、彼の肩越しに見える景色がキラキラと輝いて見える。
『…大切にする。約束するから…これからも、傍にいてくれる?』
そう言った彼の声から、彼の不安の色が見え隠れする。
好きな人から必要とされることが、こんなに嬉しいことなんて、知らなかった。
「…もちろん。嘉人くんこそ…ずっと、傍にいてね。」
『当たり前だろ。…もう、離さないよ。』
ギュッと、彼が私を抱きしめる腕の力を強めたとき、どうしようもなく心が満たされていく。
好きだと一回口に出してしまえば、その想いが止まることはない。
「……今の嘉人くん、いつもと違うね。」
『ん?』
「いつもより、よく喋る。」
彼の腕の中で顔を上げれば、嘉人くんは苦笑いを溢して見せた。