王道恋愛はじめませんか?
「…ん、分かった。」
これから、彼と多くの時間を過ごしていく中で、私の生い立ちを話すことは必然となってくるのかも、と思った私は首を縦に振った。
何から話そうかな、と考えを巡らせながら、一旦心を落ち着かせるためにも目の前に置いていた淹れたてのお茶を一口飲む。
「……両親が亡くなったのは20年前――…ちょうど、私が8歳の頃だったの。」
ポツリ、ポツリと話し出した私の過去を、嘉人くんは真剣な顔つきで、神妙に聞いてくれていた。
「交通事故で、ぶつかった車の運転手が酒気帯び運転してて、……2人とも、事故の衝撃で即死だったって後から聞いた。その時、私はまだ小さかったから…あまりその当時のことを覚えてないの。正直言うと、両親の顔も…イマイチ思い出せなくて。両親との思い出も…事故当時はよく思い出してたみたいだけど、今はもう…あんまり。」
昔はよく、私が両親の思い出を楽しそうに話すものだから、お祖母ちゃんを困らせてたことは覚えてる。
でも、悲しそうに笑うおばあちゃんに、両親とのどんな思い出話を聞かせていたのか、全く思い出せない。
「ここの家は元々お祖母ちゃんの家なの。両親が亡くなってから、私も一緒に住むようになって。でも、私は両親が生きていた頃の記憶があまりないから…ここが私の実家だって、思ってる。」
両親とどんな家に住んでいたのかも、どんな場所に住んでいたのかも、定かでない。
お祖母ちゃんは…あまり両親のことを話してくれなかったから。