王道恋愛はじめませんか?
「だからね、私のことを育ててくれたのは、お祖母ちゃんなんだ。時には母代わりとなって、父代わりとなって、私を大切に育ててくれた。」
お祖母ちゃんの愛情はすごく大きくて、暖かくて。
私の心の陽だまりのような存在だった。
お祖母ちゃんがいたから、両親が亡くなってもやけにならずにここまで生きてこられたような気もするほどに。
「元々、父方の家族は亡くなってて、親戚はいないの。母方も、お祖母ちゃんしかいなくて。だから、私に家族と呼べる存在はお祖母ちゃんしかいなかった。」
正月もお盆も、クリスマスも誕生日も、友達からよく聞くような賑やかな時間を過ごしたわけじゃない。
だけど、いつだってお祖母ちゃんは私が淋しくないようにって、正月にはお年玉もくれて神社の参拝にも連れ出してくれて、
クリスマスもちゃんとプレゼントを用意してくれたし、一緒にクリスマスケーキを作ったり、
誕生日にはサプライズで色んなことを企画してくれてた。
ちゃんと特別な日を特別な日だと、一緒に祝ってくれる人だった。
私の世界には、お祖母ちゃんしかいなかった――
「だからなのかな…半年前、お祖母ちゃんも亡くなった時、全く…立ち直れなかったの。」
『え…半年前って、』
隣にいる嘉人くんが驚くのも無理はない。
半年前と言えば――…ちょうど、私と嘉人くんが出会った頃だったのだから。