王道恋愛はじめませんか?
でも、それももう止めなきゃ。
――そう、思わせてくれたのは、紛れもなく、嘉人くんで。
嘉人くんのおかげで、前に進める。
嘉人くんが傍にいてくれるだけで、私は――…
ふわり、と暖かいものに包まれる。
それは、一ヶ月前と変わらない、嘉人くんの温かな胸の中だった。
「……嘉人くん…?」
『黙って。』
何も言わなくていいと、私の背中に回された嘉人くんの頑丈な腕が言っていた。
頬をくっつけた嘉人くんの胸からは、ドクンッ、ドクンッと、規則正しくも力強い鼓動が伝わってくる。
私…好きだなぁ、嘉人くんの心臓の音。
『……ちょっと、これからキザなこと言うから、このまま聞いててくれる?』
「うん…?」
モゾ、と顔を上げようと嘉人くんの腕の中で動けば、『コラ、動かないでってば』と照れたような彼の声が聞こえて、動きを封じられてしまった。