王道恋愛はじめませんか?
――『2番乗り場に、○○駅行き電車が参ります。白線の内側まで下がって、お待ちください。』
女性の声のアナウンスが駅のホームに流れた瞬間に、目的の電車が到着した。
停車した電車のドアが一斉に開いたと同時に、乗車していた人々が降りてくる。
「えっと、」
次々に降りてくる人込みの中から視界に入った、青のリュックを背負った小さな男の子。
「!……健人くん!」
嘉人くんから教えてもらったばかりの名前を、その子に向かって呼びかければ、その男の子はパッとこちらを向いた。
「……白川、健人くんかな?」
『――お姉さん、だぁれ?』
いきなり知らない人から声を掛けられて警戒しているのか、私を見上げる健人くんは背中に背負っているリュックの前にかかっているひもの部分を両手でギュッと握っている。
「私、真山 みのりって言うの。実は、嘉人くんから健人くんの迎えに行くようにって頼まれたんだ。」
『嘉人兄ちゃんが?』
「うん。」
私の話を聞いた健人くんは、それでも何だか不安そうな顔を見せる。
多分、私が本当に嘉人くんの知り合いなのかどうか、まだ疑っているのかもしれない。
まだ5歳だって嘉人くんからは聞いたけど、この子は嘉人くんが思っている以上にしっかりしている子なのかも。