王道恋愛はじめませんか?
まさかこんな形で、あの努力が実ることになるとは、あの時は思いもしなかったけど。
ハムスター作りも後半に差し掛かった時だった。
――カチャリ
玄関ドアの鍵が開く音がして、健人くんに囁く。
「健人くん、嘉人くんが帰ってきたよ。」
『本当!?』
パアッと顔色を一段と輝かせると、健人くんは作りかけのハムスターにも目を向けず、一目散に玄関に続く廊下へと走って行った。
それと同時に、玄関ドアが開き、夜風が室内に舞い込む。
『嘉人兄ちゃん!』
『!健人!』
玄関から漏れてくる2人の声につられて、私も玄関へと顔を出した。
「……おかえりなさい。」
『みのり。』
廊下を挟んだリビングから、そっと声をかけると、健人くんと挨拶を交わしていた嘉人くんと目が合う。
テレビや雑誌で見かけると言っても、こうやって面と向かって会うのは本当に久しぶりだからか、なんだか照れくささを感じた。