王道恋愛はじめませんか?
『…ありがとな。いきなり健人のこと、頼んじゃって。』
「ううん。ちょっとびっくりしたけど、健人くんすごくいい子だから。」
ねっ、と、嘉人くんと手をつないでこちらへとやってくる健人くんに微笑みかけると、満面の笑みで頷き返してくれた。
『…そっか。健人、いい子にしてたのか。』
『うん!さっきまで、お姉ちゃんと折り紙折ってたんだよ!』
元気溌剌とつないでいる嘉人くんの手をグイッと引っ張りながら、リビングテーブルに広げられた数々の折り紙の完成品を嘉人くんに見せようとする。
その姿が、あまりにも嘉人くんに褒めて欲しいと訴えていて、なんだか可愛らしい。
『これ、全部健人が?』
『お姉ちゃんと一緒に作ったんだよ!』
テーブルいっぱいに広げられている折り紙たちに、嘉人くんは目を丸くしている。
『すごいなー、健人。』
よしよし、と嘉人くんの大きな手が健人くんの頭を撫でれば、健人くんはすごく嬉しそうな顔をして。
またじわりと、心の中で広がっていく幸福感に、全身が満たされる。
好きな人に滅多に会うことができないことが淋しくないと言えばウソになる。
けれど、会えばいつも、そんなちっぽけな負の感情なんか吹っ飛んでいくんだから不思議だ。
それを密かに私は、嘉人くんマジックと呼んでいることを、彼は知らないだろう。
「――じゃあ、私、夕飯作ろうかな。嘉人くん、キッチン借りてもいい?」
『ん?ああ、全然いいよ。手伝おうか?』
「ううん。健人くんと遊んでて。」
きっと、健人くんの方が私よりも嘉人くんに会うのは久しぶりのはずだ。
健人くんのことは嘉人くんに任せて、私はキッチンに向かった。