王道恋愛はじめませんか?
今夜の夕飯は、カレー。
健人くんに『今日、何食べたい?』と聞いたら、速攻で『カレー!』と元気よく返ってきたものだから、瞬時にメニューが決まったのだ。
お肉を炒め、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎと、次々と具材を大鍋に投入して、煮込み作業に入った時だった。
『お姉ちゃーん!』
「はぁい?何?健人くん」
ちょっとイジけた様子で、健人くんがキッチンへとやってきた。
その小さな右手には、けん玉が握られている。
さっき、健人くんが『家から持ってきたんだ』と話していたのを聞こえていたから、てっきり嘉人くんとけん玉で遊んでいるとばかり思っていたけど。
『嘉人兄ちゃん、ぜんっぜん相手になんない!』
「え?」
健人くんの話を聞けば、どちらがけん玉が上手か勝負することになったらしい。
けれど、結果は嘉人くんの惨敗。
あまりの出来なさぶりに、愛想をつかせた健人くんがキッチンにやってきた…と。
『お姉ちゃんできる?けん玉!』
その眼差しは、あんなに折り紙出来るお姉ちゃんなんだから、できるよね!?とでも言いたそう。