王道恋愛はじめませんか?
うわ…この感じ、すごく久しぶり……。
改めて構えてみると、けん玉を肌に離さず練習していたあの頃の記憶がフラッシュバックする。
「……いくよ?」
まずは、けん先に。
マジマジとこちらを見つめる2人の目の前で、比較的簡単な技で、けん先に玉を差し込んで見せた。
カチャッ、と小さく音が鳴って、けん先に玉が収まると、『おおー!』と観衆2人から歓喜の声が漏れる。
『他には!?』
「え?えっと、」
もっと、もっと見せて、と健人くんが言うものだから、立て続けに大皿、小皿、中皿に空中にぶら下がった玉を乗せていく。
そうすると、さらに2人の期待を刺激してしまったようで、それから中皿ストライク、とめけん、ふりけんなど、テクニック技まで披露してしまった。
「も、もういいかな?」
なんだか照れくさくて、これ以上は後で、というと、健人くんから抗議の声があがる。
『ええ~?もっと見たいー!』
そう言っている間にも、私の背後で大鍋が音を立てて煮立ったことを告げている。
「後でまたみせてあげるから、ね?」
『ええ~』
『ほら、健人。もうすぐご飯できるってよ。夕飯の準備しに行こう。な?』
事情を素早く察してくれた嘉人くんが、半ば強引に健人くんを連れ出してくれたおかげで、私は残りのカレー作りに戻った。