王道恋愛はじめませんか?



『本格的なものばかりだね。』


パラパラと本をめくりながら、杉原さんはそうポツリと呟く。

まさか、杉原さんがビーズアクセの本に興味を示すなんて思ってもみなかった私は、ただその光景を黙って見つめることしかできない。

ビーズアクセサリーはどちらかというと女性的なもので、男性が一般にこういったものに興味を示すのはなかなかないだろう。

もしかして……私に合わせてくれてるのかな。

そう思ったら、素直に杉原さんのことを優しい人だと感じてしまう。

こんな私に気遣ってくれるなんて、なんて心の優しい人なのだろうか、と。


『……あ。』

「――??」


あるページをパラリとめくった杉原さんは、ピタリとその手を止めて、ページを凝視している。

いったいどうしたのだろうかと杉原さんの視線の先をたどれば、そこにはウサギをモチーフにしたストラップ型のビーズアクセサリーが載っていた。


『これ……』


ゆっくりと、杉原さんの目線が本から私へと上がっていく。

目があった瞬間、1ヶ月前にも感じた胸の奥を締め付けられるような感覚が、また私を襲った。



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