王道恋愛はじめませんか?
「――え…っ?」
『でねっ、あの時の徹くんがっ――…って、みのり?』
掴めたのは、お守りではなく、鞄の布地。
慌てて鞄を見下ろせば、鞄の取っ手に付けていたはずのお守りが、どこにも見当たらなかった。
思わず立ち止まってしまった私に気付いた未來が、コンサートの話題を止めて、固まったままの私に近寄ってくる。
『どうしたの?』
「……ない。」
『みのり?』
「お守りがない…っ!」
あのお守りは、失くしちゃダメなのに…!
どこに落としちゃったの…っ!?
確か、コンサートが始まる前には確認したはずだから――…
『ええっ!どこで落としたとか、心当たりはあるの?』
「多分、コンサート会場の中…!」
『なら、今行けばまだ中に入れると思っ――って、みのり!?』
未來の制止の言葉も振り切って、私は全速力でコンサート会場に戻って行った。