王道恋愛はじめませんか?
『ふーん…。じゃ、作ったら見せて。』
「え…?」
『はい、ありがと。』
杉原さんに言われた先程の一言に、完全フリーズしてしまった私の目の前に、杉原さんは笑顔で読み終えたビーズアクセの本を差し出していて。
その様子は、まるでさっきの発言はなかったかのようで。
私の聞き間違い――…じゃない、よね…?
おずおずと、差し出された本を受け取った私。
その動作はあまりにもたどたどしく、明らかに不自然だった。
『…なんか、君が買った本なのに、俺が最初に読んじゃってごめんね?』
「あ…いえ。そんなの、全然気にしてないから大丈夫です。1人より…2人で読むほうが、楽しいですし。」
そう言って、微笑んだ。
言ったことは、本心だ。
何をするにしたって、1人でするより誰かとしたほうが楽しいし、話題も弾む。
さっきのことは、お世辞だと思うことにしよう。杉原さんなりの気遣いだと思うことにした私は、話題を杉原さんに移した。
「それより、杉原さんは…何を買われたんですか?」