王道恋愛はじめませんか?



「――で、その“Shine"がどうしてウチに?」


数秒、まだ事態を呑み込めていないけれども、朝礼時刻も迫っている今、話を進めるのが賢明だろう。


『それが!我が社でCM撮影するんですって!』

「え?それって、ウチのCMなんでしょ?でも、そういうのっていつも別場所の専用スタジオとか借りて撮ってるんじゃないの?」


そんな私の疑問に答えてくれたのは、泊くんだった。


『今回はあの5人がウチの社員っていう設定のCM撮影だから、それなら本社で撮影した方がリアルで伝わりやすいだろうってことになって、本社で撮影することになったんだよ。ちなみに、撮影日は来週の日曜。』

「日曜?平日じゃないの?」

『平日だと、社員が健全な業務ができないだろ?それに、人がいると撮影もやりにくいし。』


へぇ~。

あの数秒撮影するだけでも、結構大変なんだなぁ…。

泊くんは入社してからずっと広報部所属だからか、そういったことも熟知しているんだろうけど、総務部一本で生きてきた私にはイマイチその大変さが伝わってこない。


『だから、今回の撮影は、広報部と総務部しか知らないんだよ。』

「え?広報部はわかるけど、何で総務も?」

『先輩!お客様のお茶汲みとか対応は、総務のお仕事ですよ!』


若干興奮冷めやらぬ様子の城田ちゃんに突っ込まれて、よく頭の回っていない私は、ああそうかと頷くことしかできない。


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