王道恋愛はじめませんか?
『――ってか、社内見回りって、具体的に何すんの?』
昼休みも終盤、日曜の件について話を進めていると、泊くんが思い出したかのように口を開いた。
「んー、まぁ、蛍光灯の取り換えとか、水回りの水漏れ修理とか、紛失物の回収に、提示物・展示物の管理、会議室の使用チェック…その他もろもろ。」
『うわ、雑用の王道だな…。』
「日曜は用務員がいないから、その分もしないといけないし。」
えげつねぇー、と漏らす泊くんは、あからさまに嫌そうな顔をする。
総務の仕事は、一般的に雑用とされる仕事ばかりで、パッとしないものばかりだ。
そのせいか、周りからレベルが下に見られることも多い。
けれど、総務部がなければ、他の部署が健全な業務ができるかといえば、できないわけで。
入社して6年、それなりに総務としてのプライドも培われた今、周囲の総務への反応にも慣れた。
『日曜は大変ですよ~!』
「いや、でも平日みたいにフル稼働ってわけじゃないし、そんなには――…」
『ああでも、日曜の件、社内でもう広がり始めてるらしいぞ。』
「……はっ?」
コーヒーを飲みながら、さも平然とそう言ってのける泊くんを穴が開くほど見つめてしまう私。
『だから、来週の日曜は残業消化を理由にわざと休日出勤する社員も増えるって噂だぞー。』
そんな私を丸ごと無視して、爽やかにコーヒーを啜った泊くん。
――…ま、マジかよ…
昼休み終了5分前、じゃあなと広報部へ颯爽と去っていく泊くんの背中を茫然と見つめつつ、軽く眩暈を覚えた私だった。