王道恋愛はじめませんか?



――嘉人 Side――


(“真山 みのり”か…――。)


某局・楽屋

俺はメンバーと共に、音楽番組のリハを終えて、思い思いの休憩を取っていた。


『あー、腹減った!どっか食べに行こうぜー!』


楽屋の中央にあるテーブル上に置いてあったチョコを一人で平らげた哲也が、突然声をあげる。


『てっちゃん、うるさい。』

『さっき弁当食ったばっかだぞ。』


メンバーの徹と浩介が、そんな哲也に見向きもせずに言葉だけで受け流す。

毎度毎度、口を開けば食の話しかしない食べ物バカの哲也へのメンバー内での扱い方は、これで定着している。


『ぶー!もー、よっちゃんも本ばっか読んでねーで、飯行こ~ぜ?』


他のメンバーから雑に扱われて剥れた哲也が、捨てられた子犬のような顔で俺にすり寄ってきた。

そんな哲也の方に顔を向けるより先に、バッと突然に哲也によって俺の手にしていた本が奪われる。


「あっ、哲也…!何してんの、返せよ。」

『やーだ!飯!』


飯に行かなきゃ本は返さないと、なんとも子どもらしい言い分をしてくる哲也に、俺は肩を落とす。

おいおい、相変わらず食い意地張ってんな…。


「分かった分かった、行くよ。行けばいいんだろ?」

『さすがよっちゃん!やっさし~』


あまり乗り気ではないが、哲也の様子を見れば本気であることはわかったために頷いて見せると、当の本人である哲也は子供のように喜んで見せた。


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