王道恋愛はじめませんか?
――案の定、私の予感は的中した。
定休日であるにもかかわらず、見回り担当の総務専用の内線しか通じない簡易携帯電話は鳴りっぱなし。
おかげで、出社して数分後から、私と城田ちゃんは休憩する暇もなく、社内のいたるところを行ったり来たり。
~♪
ピッ
「はい、総務部・真山です。」
『コピーのインクが切れてる!早く補充してくれ!こっちは急いでるんだ!』
「了解しました、場所と印刷機の番号を教えていただけますか?」
『営業部印刷室、印刷機54番!』
「今行きます!」
本社正面玄関前の展示物の点検中に掛けられた、緊急内線。
総務は雑務ばかりを担当しているからか、他の部署からの口調もきつく、態度も厳しい。
こんな風に、苛立ちを抑えきれないような命令口調で電話されるのも日常茶飯事だ。
「城田ちゃん、そっちの点検終わった?」
『はい、終わりました!』
「じゃあ、5階フロアに行くよ。今、内線でコピー機のインク補充の要請があったから。」
『はい…!』
1階フロアの受付にある、大理石でできた壁掛け時計は、もうとっくに昼の12時を指していた。