王道恋愛はじめませんか?
泊くんが化石化してしまうのは無理もないだろう。
好きな人から、第3者とお似合いのカップルだなんて言われたら、そりゃあフリーズするし、傷つく。
未だに、“か”の字しか紡げていない泊くんの背中を、城田ちゃんには見えないように叩く。
『っ、ち、違うよ!?城田さん!』
『え~?誤魔化さなくたっていいですよ~!』
ああ…、こりゃダメだ。
必死の泊くんの誤解だという言葉を、全く耳に留めていない城田ちゃん。
天然さんを相手に恋をするのは、いかに大変かということを悟った瞬間。
~♪
また私のポケットに入っている緊急内線電話が着信を告げた。
2人から一定の距離を置いた私は、すぐさま通話ボタンを押した。
「はい、総務部・真山です。」
『あっ、企画部の田中ですけど、来週の金曜に会議室を使用したいんですが、』
「はい、会議に参加される人数はいくらですか?」
左肩と左耳で携帯電話を挟み、床に置いたままだった籠の中から会議室のチェック表を取り出す。
『6人です。』
「来客はありますか?」
『いえ、ないですね。』
「時間は何時から?」
『午前11時です。』
ペラペラと会議室の使用予定表をめくり、来週の金曜の欄を見つけると、右手に握ったボールペンをスライドさせる。
「了解しました。それだと、会議室3が空いてます。」
『あっ、じゃあそこでお願いします…!』
「はい、承りました。来週金曜、午前11時、会議室3ですね。お茶汲みはそちらの事務で行いますよね?」
『あっ、はい…!』
「はい、では。失礼します。」
通話を終え、ポケットに携帯をしまうと、必要事項を予定表に書き込む。