王道恋愛はじめませんか?
『さっきの電話、新入社員ですかねぇ?』
「まぁ、そうだろうね。」
私の電話の対応を聞いていたらしい城田ちゃんが、私に近づいてくる。
遠くに見えた泊くんが、なんとも悲しそうな表情をしていたものだから、きっと城田ちゃんの誤解を解くことはできなかったんだろう。
「あっ、そうだ。仕事も一段落ついたし、ここ辺りで休憩にしよっか。」
『やった!ご飯行きましょ、ご飯!』
「うん。」
やっと休憩が取れると、2人でにこやかにここから退室しようとした時だった。
『あ、ちょっといいか?真山。』
遠くから、泊くんから呼び止められてしまった。
「…ごめん、城田ちゃん、先に休憩取っててくれる?」
『いいですよ!お2人でごゆっくり~』
脚立と、開けたままの新品蛍光灯を手に、先に退室していった城田ちゃん。
あれは…絶対、さらに城田ちゃんの誤解を深めたよね?
「…何?泊くん。」
『頼む、真山…俺の恋愛相談に乗ってくれ…。』
近づいた泊くんは、戦意喪失とでも言いたげに、しょんぼりしている。
泊くんは爽やか青年という要素以上に、乙女だったりする。
さっきの城田ちゃんの発言は、泊くんのガラスハートにどれほどの大ダメージを食らわせたのか、目の前の泊くんを見れば、それはひしひしと伝わってきた。
「仕方ないなぁ。乗ってあげるから、今日は頑張って仕事しなよ。ね?」
『う…頼りになります、みのり姐さん。』
「うるさいよ。…じゃあね。」
傍から見て、私と泊くんが仲睦まじく見えるときは大抵、泊くんの恋愛相談に乗っているときだったりする。
天然の城田ちゃんを相手に恋をしている泊くんの障壁は大きく、それにぶつかる度に泊くんは私に泣きつくものだから、他人から見るとそういう関係だとみられがちなのだ。