王道恋愛はじめませんか?
「――ちょっと、時間ある?」
彼女と少しでも長く話したいと思っていた俺は、意味もなく俺は彼女を誘ってしまう。
『あ、じゃあ…あっちに移動しませんか?今の時間は誰もいないので、』
そう言って、みのりさんが控えめに指を刺したのは、すぐ傍にあった会議室9と書かれた扉。
話をするなら中で、という彼女に、俺はすぐさま快諾して、2人で中にお邪魔することにした。
「それにしても驚いたな…まさか、こんなところでまた会うなんて。」
控室に入ってきたみのりさんを見て、心臓が飛び出るかと思うほど驚いたのは事実。
もう少しだけ言うと、彼女が入ってきた瞬間に重なった視線を、サラリと交わされたことに傷ついたのも、事実だ。
それでも、1度、2度…とこの短期間に重なった偶然に、俺は彼女との大なり小なりの縁を感じてしまっている。
『私もビックリしました…。まさか、本当に杉原さんにまた会えるなんて…。』
その声色は、もう随分前から聞きたいと思っていたもので。
トクン、トクン、といつもより早く波打つ、俺の心臓がなんだかうるさい。
『なんか、杉原さんには不思議な縁を感じちゃいますね。』
「……!」
俺が心の中で思っていたことを、ズバリと言葉にしたみのりさんを、思わず凝視してしまう。
ビシリと固まってしまった俺に、さっきまで微笑んでいたみのりさんは首を傾げている。