王道恋愛はじめませんか?
『…いいのに、そんなに何回も言わなくたって。』
「いえ…!本当に、素敵なお店に連れて行っていただいたので。…私、毎回毎回杉原さんに甘えてばっかりですね。」
今夜も、前回も、初めてあった時も。
私は幾度となく杉原さんの厚意に甘えている。――いや、甘えすぎていると言っても、過言ではない気もするほど。
『そう?俺は甘やかし足りないくらいだけど。』
「……!」
杉原さんの一言に、私の心臓はドクンッと大きく反応する。
ダメだと、分かってるのに、
想ってはならない人であることくらい、理性の中では理解しているはずなのに――…
彼のたった一言で、それが崩れていく気がした。
それは、彼の言葉だけじゃなくて、彼の持っている空気と、魅惑的な微笑と、声によって、引き起こされているのかもしれない。
「そ、それじゃ…なんか、不公平で、嫌…です。」
私ばっかりもらうのは嫌だ。
それじゃなんだか、子ども扱いされているみたいで。
杉原さんとは、対等な関係でいたい。
彼の目線と同じ高さに、私もいたいと思うワガママな自分がいる。