王道恋愛はじめませんか?
杉原さんの後ろを歩きながら、時折通り過ぎるスタッフさんの目にドキドキしつつ、ホールへと続く入り口前までやってきた。
『…あと8分か。ちょっと急いだほうが良いかもね。』
ポケットから取り出したスマートフォンの画面を見た杉原さん。
その姿でさえ、格好良く、様になっている。
「あ、あのっ」
『ん?』
アーモンド形の瞳が私を映した時、思わず息を飲む。
「ありがとうございました…!ちゃんと、時間が経ったら出ていきますので…」
残り8分。
話もそこそこに、杉原さんと別れてホール内へと向かおうと、杉原さんに背を向けた瞬間、
『あっ、待って。』
「っ?」
数分前と同じように、杉原さんに引き止められた。