王道恋愛はじめませんか?



けれど、部署を超えた社員同士の交流という趣旨を掲げているため、各部署5名ずつの参加は必須となる。

大概の部署では、若手社員を集めれば(新入社員は参加がマスト。ゆえに必須条件から除外されている)、余裕で5名は超えられるのだが――…、

年齢層が高く、新入社員も若手社員の振り分けが乏しい総務部では、その5名を集めるだけでも四苦八苦。

もう若手とは言えない入社6年目の私も強制的参加を部長から命令されたのは言うまでもない。

ちなみに、私は6年連続、日光へと足を運んでいる。


『今年は絶対!日光に行くんです!』


「もちろん、先輩も行きますよね!?」と食い気味に問いかけてくる城田ちゃんに、若干圧倒されつつも首を縦に振った私。

あまりの勢いに、つまんだままの卵焼きが箸から落ちそうになった。


「…どうしたの?城田ちゃん、妙に社員旅行に張り切ってるけど…?」


日光が初めてとはいえ、まだまだ20代前半の女の子がこんなに期待を込めて楽しみにしているような場所じゃないはずだ…日光は。

どちらかと言えばあの観光名所は趣があって、閑静で、まだまだはしゃぎ足りない!と言わんばかりに元気な城田ちゃんにはあまり似つかわしくないような…気がするのは私だけだろうか?


『私…!日本史が大好きなんです…!!』

「!」


私の知らない意外な一面を見せる城田ちゃんに、とうとう私は卵焼きをポロリとお弁当箱の上に落としてしまった。



< 91 / 190 >

この作品をシェア

pagetop