王道恋愛はじめませんか?
『先輩…それ聞いちゃいます?』
そう言いつつ、チキン南蛮を食べる城田ちゃんは、聞いてほしくてたまらない、とでも言いたげだ。
『もぉ~、楽しいの一言ですよ!泊先輩って聞き上手だからもう……愚痴が止まらなくて止まらなくて……良い飲み仲間を見つけた!って感じです!』
“飲み仲間”かぁー…
その後も楽しそうに昨夜のことを話し出す城田ちゃんの話を聞きながら、まだまだ泊くんも大変だなぁ、と心の中で苦笑する。
でもまぁ…宣伝部の先輩から飲み仲間に昇格したわけだし…ちょっとずつ、泊くんの努力が実り始めてるってことなのかも。
思い返せば、最近の泊くんは活き活きとしている気がする。
私の知らない間にこうやって好きな人と過ごして、さらに乙女な部分が磨かれてるんだろうな。
必死に脈ありの反応を見せる泊くんと、その隣でものの見事にそれをスルーしてビールを飲んでいる城田ちゃんの画がありありと思い浮かぶことができて、なんだか笑えて来る。
「ふふっ」
『?先輩、どうしたんですか?』
「ううん。良かったね、城田ちゃん。」
『??――…はい!』
青春漫画のような恋をしている2人をそばで見つめながら――…、いいなぁ、とただただ羨ましく思う私の見つめる先にある通学カバンの中には、ラッピングされたビーズアクセサリーがあった。