王道恋愛はじめませんか?
『う、わぁ…!』
午後9時。
こんな時間帯のせいか、大公園にいる人は夕方の時よりも大分減っていた。
利用している人はランニング中の人が多く、これなら周りを気にせず、イルミネーションが楽しめる。
設置されている無数のイルミネーションを目の前に感嘆の声を上げている杉原さんの左隣で、私はそっと安堵した。
『想像以上にすごいね、これは…』
「ふふっ、ですね。私も初めて見たときは、杉原さんみたいに驚きました。」
あまりにもイルミネーションを見上げる彼の瞳がキラキラとしていて笑ってしまうと、杉原さんは何故かちょっと剥れてしまった。
「えっ…ど、どうかしました?」
『…別に?なんか、俺だけはしゃいじゃって、子どもみたいだなって思っただけ。』
ポツリと小さな声で告げると、彼は先に歩を進めて行ってしまう。
「子どもなんて、そんな…思ってないですよ?」
『……ウソ。さっき、はしゃぐ子どもを見守るお母さんみたいな目で俺のこと見てたでしょ。』
頑張って彼の元へと駆け寄り、顔を覗き込んだけれど、それもフイッと顔を逸らされてしまう辺り、相当拗ねているらしい。
なんだか、彼の子どもらしい一面も見られて嬉しい――…あ、これがダメなのか。
苦笑いは心の中だけにして、私は斜めになってしまった杉原さんのご機嫌取りをするため、口を開いた。