この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
03裏切りの真実
とりあえず私は律と一緒にマンションから出た
「なんでなにも言わなかったの」
「訊かなかったろ」
「訊かなかったらいいじゃないでしょ
まさかさっきの私のスマホ?」
「だったら?」
「もう最低」
「とりあえず帰るぞ
いいな?」
「わかったわよ
もういい律なんて知らない出て行って」
律は歩きだしてしまう
悪いのは私わかってる
でも···
迷って立ち止まった私に戻ってきた律が手首を掴む
「送ってやる」
まったくどうして律は人を甘やかすんだろう
しかたなく私は地下駐車場に向かい律のバイクの後ろに乗った
けたたましいバイクの音がして私はぎゅっと目を瞑り律の細い体につかまった
「目あけてみな
それともうちょい手ゆるめて痛い」
私は目を開けてみる
繁華街の明かりがまるで流れ星のように過ぎていく
「キレイ」
私は律の背中に顔をうずめた
律の匂い···
ずっとこうしていたい
でも願いはすぐに消えマンションの前にバイクが停まった
「律」
慣れない呼び名に多少困惑しながらも呼びとめた
「なんだよ?」
「んんなんでもない」
律はいつか出て行く存在
忘れなきゃ
小さく手を振って律を見送った
彼がどこでなにしようが彼の自由だ
私は疲れた体をひきずって部屋に戻った
ソファーに横たわると律の匂いがする
けっきょく彼は戻ってこなかった
翌朝、病院に電話をしたがけっきょく退院したらしい
律を探す手だてもないまま私は途方にくれていた
とりあえず会社に行ってパソコンの電源をつけた
「ヤタガラス」
彼を知る手掛かりはそれしかない
ヤタガラスで検索をかけるとあれやこれや出てきたがスクロールさせるうちに衝撃的な事実にたどりついた
ヤタガラス児童保護施設
孤児院?
ヤタガラス児童保護施設名簿と検索
出るわけないよねとため息をついていると美沙が隣で頷いた
「ふーん児童保護施設ね」
「なんでもないなんでも」
IDログ···
「麻衣それってさ三年前の銀行襲撃事件と関係ある?」
「なにそれ」
「麻衣たまには新聞読みなよね」
「うっうん」
ほれと手渡されたのは一枚の記事
関係ないような記事にほっとする
「そうそう菅さん今日休みらしいね
なんでも強盗に襲われたみたい」
「なにそれ」
「あれ麻衣、スマホは?」
「家に忘れちゃったみたい」
そのまま仕事モードに切り替えてやっとお昼休みになった
今日は外に食べにいこうかな秋晴れだし
外は気持ちよさそうなので美沙を誘おうと辺りを見る
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