この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
「なんでもねぇよ」
「律に会ったとき他人って気がしなかったんだけどどこかで会った?」
「どこで?」
「だよね」
正直言われて焦る
でも忘れないでほしいという自分もいる
「おまえは知らなくていいんだよ」
「律さなんか隠してない?」
「なにを?」
「私には父親がいないの
お母さんは別れたって言ってたけど」
「だから?」
「まさかね」
なんかいま俺の気持ちをよんだ?
「まさかな」
「律」
名前を呼ばれて焦った拍子に煮魚の骨が刺さる
「ってぇ」
「大丈夫?ごめんね急に話しかけて
あのねどこに紅葉狩りに行く?
お宿予約しなきゃ」
「やっぱ日光じゃね?」
「ん~京都とか」
「俺が運転辛い」
「あっごめん」
考えたけどやっぱり近場の上野に行くことにした
「おまえ年考えろよ」
「パンダ可愛いじゃん」
「ったく」
「律あのね私、小さい頃に律に会った気がする」
「他人の空似だろ
ほらこの世界には同じ顔の奴が3人はいるらしいじゃんか」
「本当にそうかな」
「さあな」
俺は荒汁を飲みながら言う
考えこむ麻衣に俺は話しを変えた
変えるつもりだった
「俺は知ってたよおまえのこと」
好奇心とは恐ろしく俺はつい口を滑らせた
「えっ?」
あまりにも声が小さいから聞こえなかったらしい
「なんでも」
「変なの」
食べるだけ食べて俺は皿洗いに立つ
もう一度、律に抱きついた
この感じ覚えてる
でもどこで?誰と?
シャツの洗剤の匂い日溜まりの匂い
律の香水の匂い
なんで懐かしく思うんだろ
「離れろよいい加減」
「あっごめん」
「どうした?」
「なんでもない」
「俺ちょいコンビニ行ってくる」
「私、行くよ欲しいものあるし」
律はそっと私に千円を手渡した
「ほら」
「いらないよ子供のお使いじゃないんだから」
「あっそ」
私は急いで部屋を出る
今日は欲しかった雑誌の発売日
私は急いでコンビニに向かった
コンビニは案外、近くて歩いて10分くらいでいける
コンビニに着くと律が欲しい物を聞き忘れていてスマホを取り出した
「もしもし律、コンビニ着いたよ」
「タバコとビールとチョコレート」
「はい?」
「いいから早く」
「わかったわよもう」
通話を終えると見知らぬ人に手を捕まれた
そのまま路地裏まで引っ張られ私は怖くなり声がでなかった
よくドラマとかで叫べばイケメンが来るという設定があるがあんなのウソだ
実際は声なんてでない
目をぎゅっと瞑っていると肩に激痛がはしった
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