この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
07過去を乗り越えて
「楽しいこと?」
「うん」
亜美は精神的に病んでいる
そのせいで一度、精神病棟にいたこともあった
ヤタガラスに居たのは半年もなかった
亜美は施設でも浮いていた
だから親も施設に預けたらしいがすぐに親元に戻された
亜美は何故か俺を慕い勝手に恋人だのと言い寄っていた
「亜美ね律に近づけたよ」
「はあ?」
「亜美ねみつけちゃったの律の大切な人だから」
俺の中で何かがふっきれていた
「今すぐ出てこれるか?」
「うん」
スマホをきると麻衣が怪訝な顔をする
「どうしたの?」
「別に
少し待ってられるか?」
「大丈夫?」
「ああすぐ終わる」
ケリをつけなきゃ行けないのは俺の方か
カラスが一羽、あざ笑いながら鳴いている
病院の近くの公園で待っていると亜美が来た
「久しぶり」
「おまえなぁ」
「律だあいすき
なんで私の物にならないの?」
まわされた手を強引に振り払った
「目さませよ?
おまえそれ犯罪だぞ」
「ふふ知ってる
だって律の全てが欲しいんだもん
だから邪魔だから消しちゃうの
でもあの子あんまりお金なかったなぁ残念
でもこれ律でしょ?
いいなぁこんな写真、亜美は持ってないもん
ねぇ一緒にいてよずっと」
話しは通じないか
相変わらずだな
考えているとゆっくりと亜美が近づいてくる
まるで恋人同士のように抱きついてきた
「っ···」
俺は膝をついた
「律がいけないんだよ私の物にならないから」
霞む視界···ヤバいな
遠くで誰かが言い争ってる
1人はさっきの刑事
俺に駆け寄って来たのはまた別の救急隊
どこかで鴉が鳴いて羽ばたいた
目覚めたのと痛みは同時で荒い息を吐いた
肋骨に刺さって止まったなこりゃ
浅くはないか
左腕は動かないか
軽く舌打ちして天井を仰ぎ見るとノックがして刑事が入ってくる
「失礼する」
「なにも言いたくない」
「なあ律坊おまえもヤタガラスの被害者なのか?」
「その質問はパス」
「答えろ」
「ヤタガラスね」
俺は天井を見ながら呟いた
「彼女も間宮亜美もそうだった
律坊知っていて自分の恋人を傷つけたんじゃあねぇよな?
そんなら立派な共犯だ」
昔気質、仕事一筋な刑事という言葉が似合う
さっきの刑事と違い知り合いだということ
「あいつがあの場にいたなんて予見できねぇよ
連絡をとったのもさっき呼び出した時だけだ
まああんたらはそれを信じないけどな無能だから」
頬に鈍い痛みがはしった
「おまえはなんも変わんねぇな」
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